カーボンブラックの性質を表す用語とその解説

(カーボンブラック協会 Carbon Black年鑑 1998、No.48 114ページより)

 

 カーボンブラック(以下CBと略記)の基本的特性,ゴム用CBのJISに規定されている項目及びその他一般的に使用されている用語について、簡単な解説を次に示す。

CBの基本的特性:


 CBをゴムや樹脂,塗料やインキのビヒクルに配合,分散させ,補強性や黒色度,導電性などの機能を付与する際の重要な因子は,粒子径,ストラクチャー及び粒子表面の化学的性質で,CBの三大特性と呼ばれている。

 

粒 子 径:

CB凝集体を構成する小さな球状(微結晶による輪郭を有し,分離できない)成分を電子顕微鏡により測定,算出した平均直径。これを単一粒子と見なした粒子径は,ゴムに配合した場合の補強性や,黒色度と密接に関係している。その大きさは,グレードにより10~500nmである。

 

ストラクチャー:

CBは粒子どうしが融着した状態で存在し,アグリゲートと呼ばれ,概念的には,ぶどうの房にたとえられている。このアグリゲートの発達度合いをストラクチャーといい,ハイ(高),ノーマル(中),ロー(低)に分類される。このストラクチャーの高低が,ゴムに配合した場合の補強性や押出特性,インキ/塗料/樹脂着色などに使用する場合の分散性,着色力,粘度及び導電性に大きな影響を与える。

 

粒子表面の化学的性質:

CB粒子表面に存在する酸化物や活性水素などの表面官能基に由来するもの,表面に吸着された物質に起因するもの,表面のマクロ,ミクロ孔径とその分布がもたらすものなどをいう。各種の用途において,この性質が直接,間接に影響するといわれている。

 

JIS K 6217:1997 ゴム用カーボンブラックの基本性能の試験法

 

よ う 素 吸 着 量: 

CBの細孔を含む全比表面積を測定する最も代表的な測定法の一つである。CB 1g当たりに吸着する,よう表のmg数で表す。

 

窒素吸着比表面積:

よう素吸着量と並び,CBの全比表面積を測定する方法であり,脱気したCBを液体窒素に浸せきさせ,平衡時におけるCB表面に吸着した窒素量を測定し,この値から比表面積(m2/g)を算出する。

 

CTAB吸着比表面積:

CBの微細孔を含まない外部表面積を測定する方法であり,CBにCTAB(界面活性剤の一種でCetyl Tri-methyl Ammonium Bromideの略)を吸着させたときの比表面積(m2/g)である。

 

D B P 吸 収 量:

個々のアグリゲート間の空隙率がストラクチャーと正の相関があるので,DBP(可塑剤の一種でDi-butyl phthalateの略)吸収量(cm3/100g)で以てストラクチャーを間接的に定量している。なお,CBがゴムに練り込まれる際に剪断力でストラクチャ-の一部が破壊される。この尺度として,CBを予め圧縮し,ストラクチャーを壊した後のDBP吸収量を測定する方法もある。

 

比着色力(ティント):

CBを白色顔料とともにピヒクルで練り,ガラス板などに塗ったときの色の明るさのことで,標準品と対比して指数で表す。色の濃いものを着色力が大きいとする。

 

JIS K 6218:1997 ゴム用カーボンブラックの付随的性質の試験法

 

加 熱 減 量:

乾燥器,赤外水分計等により一定条件下で加熱した際の減量をいう。加熱減量の大半は水分である。

 

灰  分:

CBを750℃で加熱し,完全に灰化した残分のことで,量的には1%を越えるのはまれである。

ふ る い 残 分:

CB中の夾雑物のことである。CBを流水で所定の目開きのふるい上で洗い流したとき,ふるい上に残るものをいう。グリットともいう。

 

トルエン着色透度: 

CBのトルエン抽出液の着色度を特定波長光の透過率(純トルエンを100%)で表す。CBに含まれる未分解有機物の残留程度を表す指標である。

 

溶 媒 抽 出 量:

CBをアセトンまたはトルエンで抽出した後,溶媒を加熱除去して抽出量を測定する。CBに含まれる未分解有機物の残留程度を表す指標である。

 

JIS K 6219:1997 ゴム用カーボンブラックの造粒物の性質の試験法

 

徴 粉 量:

造粒されたCB中に含まれる一定の粒度以下の部分をいう。一般に125μmまたは150μmの目開きのふるいを使用する。この量が多いとハンドリングに影響を及ぼすことがある。

 

か さ 密 度:

一定容量の容器内に,一定条件で充てんしたCBが示す単位容量当たりの質量で表す。かさ密度はCBの粒子径,ストラクチャー,造粒条件によって変化する。

 

子の硬 さ:

造粒粒子の比較的丸い粒20個が破壊されるときの荷重(cN)の平均値で表す。通常日本では,lmmφの粒を測定するが,場合によっては別の大きさの粒を測定することもある。硬すぎるとゴムやインキに使用するとき分散不良となり,低すぎるとハンドリング中に造粒粒子が壊れやすくなる。

 

造粒粒子の大きさの分布:

造粒粒子の目開きの異なる数種類のふるいを用いて試験する。分布特性は製品のゴム練り加工性,特に練り速度に大きな影響があるといわれている。

 

その他一般的に使用されている用語

 

ア グ リ ゲ ー ト: 

ー次凝集体。CBの構成単位。微球状の基本粒子どうしが融着し,連鎖状ないしは不規則な鎖状に枝分かれした複雑な凝集形態を示す。ゴムの補強性や導電性に関与している。通常基本粒子が数個から数十個の凝集体で,数十~数百ナノメターのサイズである。

 

凝 集 体 径 分 布:

アグリゲートの大きさやその分布を言う。水に分散させて遠心沈降法で求める。(ストークス径)。一般に凝集体を分布をシャープにすると補強性が向上し,ブロードにすると動的特性が向上する。

 

ア グ ロ メ レ ー ト:

二次凝集体。アグリゲートどうしがファンデルワールス力や単なる集合,付着,絡み合い等により形成した凝集塊。通常,数十~数百マイクロメターのサイズである。

 

積:

CB単位質量当たりの表面積(m3)で示され、よう素,窒素, CTABなどの吸着量あるいは電子顕微鏡による平均粒子径から算出する。

 

度(ラフネス):

BET法(気体吸着法)で測定した比表面積と電子顕微鏡で測定した平均粒子径から求めた比表面積との比をいい,多孔度ともいう。この値が大きい場合はCBを表面に凹凸または細孔のあることを示し,チャンネルブラックや酸化処理したCBは比較的値が大きい。

pH 値:

CBの泥状物の示すpHをいう。主に表面酸素含有基,灰分によって影響される。一般にチャンネルブラックは酸性でファーネスブラックは中性または塩基性を示す。

 

表 面 官 能 基:

CB表面に存在するカルボキシル基、水酸基、キノン基などをいう。

 

揮 発 分:

CBの表面官能基がCO,CO2,H2Oなどの形で脱離したものである。CBをるつぼに入れ950℃で7分間加熱したときの減量をいう。

 

マスストレングス:

ー定容器に入れた造粒CBを凝集固化させる最小の荷重である。造粒CBのバルク・ハンドリング性に関係する指標である。

 

重:

CBの単位容積(アグリゲート間の空隙を含まない)当たりの質量である。正確に測定することは困難であり,測定法によってもその値が異なるが,1.74~1.86の測定例がある。一般に炭素類の真比重は黒鉛化度を表している。


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