ゴム工場 揮発性有機化合物排出規制(VOC規制)
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工場等から出る有機溶剤が、光化学オキシダントの原因となるとみて、その溶剤を大気に大規模に放出する量を規制するため平成16年5月に大気汚染防止法が改正され、平成18年春より溶剤を使用する工場は都道府県に届け出をして、また排出基準を守ることになりました。これを揮発性有機化合物排出規制(VOC規制)といいます。VOCはVolatile Organic Compoundsの略。

ゴム工業では、ゴムと金属の接着に加硫接着剤が使用され、これには多くの有機溶剤が含まれています。接着剤を塗布したあとオーブンで焼付けし溶剤を飛ばし、大気に溶剤を排気しています。またゴム引布、粘着テープを生産するときには有機溶剤を含んだゴムのりを塗り、乾かしますが、これも溶剤を大気は放出しています。さらにタイヤ工場では工程により、ゴムのり、ゴム揮をゴムコンパウンドの接着に使用するケースも多いようです。ゴム工場では金具等の洗浄工程で溶剤を使い、部品の塗装工程で溶剤を使うこともあります。これらの有機溶剤(トルエン、キシレン、ベンゼン、ゴム揮、トリクロロエタン、メチレンクロライド、灯油等は基本的にはこのVOC規制の対象になりますが、以下の審議会答申案のとおり、その溶剤乾燥工程にある、送風機の能力が一定以上(つまり大規模な工場のみ)の場合のみ、その溶剤排出濃度の規制をうけることになり、また平成21年3月末までにその規制を達成する必要があります。よって一定規模以外の中小工場は、自主的取組みで対処してゆくことなります。
 PRTR法でも有機溶剤が対象物質になっていますが、PRTR法は、大気に放出する溶剤の量を年一回報告する義務(その報告した排出量は公開されます)はありますが、法的に何PPM以下にするとの規制はありませんでした。しかしこのVOC規制は、法的は大気に放出する溶剤濃度に上限の規制が設けられることになります。

2.その溶剤の排出規制の内容は、環境省の中央環境審議会でその内容が審議され、平成17年4月8日に審議会答申案がまとまりました。この案がほぼ施行法令になる可能性が高いのです。
 その内容は、ここをクリックして見てください。(4月8日答申案pdfファイル)
法規制と自主的規制をベストミックスして、平成22年までに溶剤の大気放出量を現在の3割程度を削減することを目標に、国内に数十万あるVOC排出工場のうち規制対象は数千施設になるといわれています。

概要は、
大気の放出される気体の有機化合物を揮発性有機化合物(VOC)として、
その放出量が多い工場のみを揮発性有機化合物排出施設として規制し、
その対象になる工場は、都道府県知事への届け出、排出濃度の測定、排出口での排出濃度基準を守る義務があります。
 その対象施設、規制濃度の案は、
塗装(吹付)施設-排風機能力が100,000M3/時以上のみ-Max700ppmC
            (自動車工場の新設工場のみMax400ppmC)
塗装の乾燥施設-送風機能力が10,000M3/時以上のみ-Max600ppmC
接着の乾燥施設-送風機能力が15,000M3/時以上のみ-Max1,400ppmC
回路印刷、樹脂ラミネート、粘着テープ等の接着の乾燥施設
          -送風機能力が5,000M3/時以上のみ-Max1,400ppmC
グラビア印刷乾燥施設-送風機能力が27,000M3/時以上のみ
                                -Max700ppmC
オフセット印刷乾燥施設-送風機能力が7,000M3/時以上のみ
                                -Max400ppmC
化学製品の乾燥施設-送風機能力が3,000M3/時以上のみ-Max600ppmC
工業製品の洗浄施設-洗浄剤が空気に接する面積が5M2以上のみ
                              -Max400ppmC
ガソリン、原油、ナフサ貯蔵タンク設-1,000Kl以上(既設は2,000Kl)以上のみ                              -Max60,0000ppmC
送風機能力=排風機(ベンチレーターファン)能力
ppmC=炭素換算の体積百万分率
乾燥施設は焼付施設も含む

これらの対象となる施設は、潜在的VOC排出量(溶剤使用量に近い)
50トン/年程度を目安に決められたとされています。

3.よってゴム工場では、この審議会答申案を従ってまずは工程を点検し、工場の施設がこの排出規制の対象となる工程があるかどうかを調査することから始めましょう。上記の詳細案(pdfファイル)で、特に、接着(加硫接着剤、ゴムのりを含む)の乾燥、工業製品の洗浄(金具の洗浄)、塗装の乾燥(ゴム部品の塗装)の工程、化学製品の乾燥(ゴムポリマー、ゴム配合剤製造時の乾燥)の送風機の能力に注目してください。 対象となる工程では、その工程の送風機(排風機)の能力が対象範囲内かどうか、対象となる場合には、排出口での溶剤濃度は何PPMCか、規制濃度以上であった場合には、溶剤濃度を規制量未満に下げるためにはどういう方法があるのか?の検討を始めましょう。
 対象施設の大体目安は、溶剤使用量50トン/年とも言われています。月に4トン以上有機溶剤を購入しているゴム工場は要注意です。

平成17年度中に、正式な施行法令が発表されますから、それを確認してから正式に対処すべきでありますが、上記の法令を予想して事前の準備も大切です。

4.その他関連ある情報は以下のサイトにあります。

  1. 環境省 VOC規制の報道発表4-8-2005
  2. 環境省 VOC規制 排出抑制制度について(中央環境審議会答申案)
  3. 環境省 VOC規制 排出抑制検討会の委員会報告書等
  4. 環境省 PRTR法サイト 
  5. ゴム工場向けPRTR法解説(by加藤事務所) 
  6. (社)全国環境保全推進連合会 VOCの動向について 
  7. 環境Goo VOC解説
  8. 日本塗料工業会 VOC解説 

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更新日2005/04/10
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