ラバーステーションでは、フッ素ゴムフルオンアフラス(旧商品名
JSRアフラス )に注目し、その今後の応用を特集しました。
電気絶縁性を利用した用途展開
【電線分野】
フルオンアフラスの特徴の一つとして電気絶縁性が高いことが上げられる。
以下に代表的フッ素ゴムとの比較を示す。
|
体積固有抵抗率
|
誘電率
|
誘電正接
|
絶縁破壊電圧
|
FluonRAFLAS
|
2x1016Ω・cm
|
3
|
0.05
|
25kV/㎜
|
フッ化ビニリデン系ゴム
|
2x1013
|
17
|
0.03
|
20
|
EPDM
|
5x1016
|
2
|
0.0015
|
40
|
シリコーンゴム
|
5x1015
|
3~4
|
0.007
|
25
|
ブチルゴム
|
1x1015
|
3
|
0.005
|
30
|
SBR
|
1x1015
|
2~3
|
0.006
|
25
|
クロロプレン
|
2x1013
|
7
|
0.04
|
15
|
|
純ゴム配合 R.T.
|
電気特性の温度依存性

|
#100/#150 |
MZ201 |
体積固有抵抗率,Ω・cm |
3x1016 |
4x1015 |
誘電率(1kHz) |
2.8 |
2.8 |
誘電正接(1kHz) |
3x10-2 |
3.3x10-2 |
絶縁破壊電圧,kHz/㎜ |
23 |
16 |
*純ゴム配合
フルオンアフラス電線のメリットとしては、
* シリコン電線を上回る耐熱性(200℃耐熱)
* 耐スチーム性に優れる。
* 同容量シリコン電線と比較して、線径を細く出来る。
* ガラス繊維編組していないので、加工時にガラス繊維屑が発生しない。
* 耐熱フッ素樹脂電線と比較して、柔軟性に優れる。
* 難燃性である。
電気絶縁性に優れる材料としてはフッ素樹脂が知られているが、樹脂であるため、電線としての柔軟性に欠け、取り回しに問題がある。
その点、フルオンアフラスは、柔軟性を持ちながら、優れた絶縁性を持つ材料であると言える。
細物電線は、自動車、家電、ガス器具等の分野で、幅広く用いられている。
太物電線は、溶鉱炉回りや硝子溶解炉回りの電線、新幹線の動力ケーブル等に使用されている。
電線はフルオンアフラス発売以来の用途であり、当初は耐熱電線として、ガスレンジ・電子レンジなど熱家電の内部配線として採用された。
次に、硝子炉周囲電線もシリコン硝子編組線の端末加工性の悪さが問題となっていたが、フルオンアフラス電線が採用された。その後、外部温度に耐えるのみではなく、電線の細線化・大電流化により、内部発熱に耐える絶縁材料としても用途が開発された。具体例としては、エレベーター用動力ケーブル、新幹線・ハイブリット自動車用動力ケーブルが挙げられるが、いずれのケースにおいても、大電流を流した際に内部導体から発生する熱に耐える絶縁材料として評価されている。新幹線を例に挙げると、車体の軽量化を図る為には、電線の軽量化も求められるが、電線を軽くするには導体を細くするのが一番効果的。導体を細くすると当然抵抗が大きくなり、同じ電流を流した場合の発熱量が多くなって、今迄より高い耐熱性が要求されることになる。
将来電気自動車がポピュラーになってきた場合、この用途は大きく伸びる可能性があり、そう言った意味で、ハイブリット車の電線に一部とは言え採用されたことは、非常に意味が大きい。
まとめフルオンアフラスの電線用途は、発売以来、最も長く使用されている用途であるが、現在でもシリコン電線の上位として、200℃耐熱でかつ柔軟性を合わせもつ電線被覆材料はフルオンアフラスのみである。自動車・鉄道車両などの軽量化のため電線細線化に伴う発熱量上昇、OA機器などの複合機能化による内部温度上昇など耐熱電線に対するニーズは高まっており、さらにゴムとしての柔軟性を合わせもつフルオンアフラスは電線の取り回しが自在になる。従い、フルオンアフラスは電線材料として、今後とも新たな用途展開が可能と思われる。
<参考>フルオンアフラスの特徴は、いくつかありますが、他のフッ素ゴムに比べて
耐薬品性が優れている (高温での強酸、強塩基でもほとんど劣化しない)
耐スチーム性 、連続使用温度230℃可能
電気絶縁性に優れている(体積固有抵抗率が1015 ~1016 Ω・cmと極めて良好)
ということです。
よって自動車用途では、シャフトシール用途 、シリンダーライナーシール用途、ベアリングシール用途、ディーゼルターボホース用途
一般工業用部品では、 メカニカルシール用途、重油用途、大型エンジン用途、ケミカルポンプ及びバルブ用途、食品用途及び半導体製造用途、電線用途
があります。
フルオンアフラスはガソリンには膨潤するため向いていませんが、一方耐薬品性がよいため、いろいろな添加剤を含んだオイル、グリースのシール、ホース材料に最適です。
現在、フルオンアフラスの販売用途は、国内の70-80%が耐熱絶縁電線で、残りがシール材やホース、逆に、海外では電線は少なく、殆んどが耐塩基性を生かした自動車向けシール用途です。従来、国内では、金型離型性が悪いため、型物用途では展開がすすんでいませんでしたが、新品種開発で従来フッ素ゴムの加工性を実現できるようになりました。これにより、フルオンアフラスの特徴を生かし、国内外のシール材・ホース材、型物市場にフルオンアフラスが用途展開されていくことになるでしょう。
耐塩基性がありますので、アミン系やいろいろな添加剤を含んグリースを使用する分野、ベアリングシール、自動車シャフトシールへの応用が期待できます。従来のフッ素ゴムでは、シールゴムがグリース中の塩基性添加剤にやられ硬化してしまうこともありました。アフラスゴムはその点安心してご使用になれます。
フルオン・アフラスのホームページ http://www.fluon.jp
1.イントロダクション
2.耐薬品性を利用した用途展開(1) 自動車中心
3.耐薬品性を利用した用途展開(2) 一般工業用途
4.耐薬品性を利用した用途展開(3) 食品用途、半導体用途
5.電気絶縁性を利用した用途展開
耐薬品性データ1、 データ2、 いろいろな薬品に対する耐薬品性の指標
耐熱性データ 耐アンモニア、エチレンジアミン性試験写真
AFLASプレゼンテーション資料
フルオン・アフラスと一般フッ素ゴムFKMとパーフロゴムとの比較
フルオン・アフラスの品種
当初、テトラフロロエチレン-プロピレンの二元系ポリマーでスタートしたフルオン・アフラスだが、その後第三成分を加えた三元系ポリマーも上市されている。
ポリマー構造 |
TFE/P |
|
TEF/P/VdF |
品種 |
150L |
150E |
150P |
100S |
100H |
150CS |
150C |
SP |
SZ301 |
MZ201 |
比重 |
1.55 |
1.55 |
1.55 |
1.55 |
1.55 |
1.55 |
1.55 |
1.51 |
1.51 |
1.60 |
フッ素含有量
(%) |
57 |
57 |
57 |
57 |
57 |
57 |
57 |
55 |
55 |
60 |
ムーニー粘度
ML1+10
(100℃) |
35 |
60 |
95 |
160* |
110* |
130 |
100* |
75 |
67 |
50 |
ガラス転移温度
℃ |
-3 |
-3 |
-3 |
-3 |
-3 |
-3 |
-3 |
-3 |
-3 |
-13 |
外観 |
渇色 |
白色 |
黄色 |
加硫系 |
パーオキサイド |
電子線 |
パー
オキ
サイド |
ポリオール |
用途、特徴 |
ライニング
押出し |
汎用 |
高強度 |
押出し |
汎用 |
<表、写真、データ、資料は株式会社旭硝子からの提供です>
以上
更新日2002/09/20
All Rights reserved byShinichi Kato Office
このラバーステーション、ゴム情報リンクのすぺてのページについて、無断転載を禁じます。
-加藤事務所- |