ラバーステーションでは、フッ素ゴムフルオンアフラス(旧商品名 JSRアフラス )に
注目し、今後の応用を特集しました。
フルオンアフラスの、耐薬品性を使った用途展開(1)
アフラスの自動車用途
フルオン・アフラスは、その卓越した耐薬品性を利用して、自動車の信頼性アップに大きく貢献している。
シャフトシール用途
自動車のエンジンオイルやトランスミッションオイル中には、潤滑性能を向上させる為に、数多くの添加剤が加えられている。それらの添加剤の中には、アミン化合物等の塩基性化合物も多く含まれており、オイルの温度が上昇してくると、これらの薬品が本来の働きとは別に、ゴムの劣化を促進することは良く知られている。フッ化ビニリデン系フッ素ゴム(以後一般フッ素ゴムFKM)も使用されているが、塩基性化合物に対する耐性で問題を抱えている。現在は余り用いられていないが、元来一般フッ素ゴムFKMはアミン加硫という方法で加硫されていた。アミン化合物で加硫出来るということは、アミンのアタックを容易に受けるということで、オイル中の添加剤に一般のフッ素ゴムが弱いというのは、その化学構造からくる宿命である。
フルオン・アフラスは、これらの塩基性化合物に対して極めて高い耐性を持っており、高温かつ長期間の使用に十二分に耐える素材である。特に海外において多くの実績を持っており、ゴムに対する要求が厳しくなるにつれ、日本国内での実績も増えると考えている。
アメリカの製品 ヨーロッパの製品
シリンダーライナーシール用途
一般フッ素ゴムFKMは、NBR等と比べて優れた耐薬品性を持っていると言えるが、温水やスチームに対して弱いことは、余り知られていない。2002年5月23日に開催された日本ゴム協会の研究発表講演会において、一般フッ素ゴムFKMが温水中で硬化劣化することが、(財)化学物質評価研究機構と日本マリンテクノ(株)の共同研究として報告されている。(発表番号B-9)
加えて、冷却水(LLC)にもオイルの場合と同様に、防錆剤をはじめとする薬品が加えられているので、更にFKMの硬化劣化が促進され、不具合を生じることが報告されている。

トラック用シリンダーライナーシール
(フルオン・アフラス製 Made in America)
アメリカにおいては、大型トラックは100万マイル保証が一般的になっており、当然のことながらゴム部品に対しても、100万マイルメンテナンスフリーが求められている。今迄用いられてきたシリコンゴムやEPDMのO-リングでは、この過酷な要求に応えられないと判断されている。上の写真は、大型トラックのディーゼルエンジンに使用されている、フルオン・アフラス製のシリンダーライナーシール用O-リングであるが、高温のLLCに長時間接触していても、優れた耐熱性と耐薬品性を兼ね備えている為、100万マイル保証に耐え得る材料として、採用が拡大している。
ベアリングシール用途
エンジン回りのベアリングは、当然のことながら高温にさらされる為、ベアリングシール用ゴム素材としては、耐熱性の高いフッ素ゴムが多く使用されている。しかし、一般の高温用グリースには、フッ素ゴムを激しく劣化させる添加剤(例えばウレア系増稠剤)が含まれていることが多く、それを避けるために非常に高価な特殊グリース(フロロシリコングリース等)が用いられている。この高価なグリースを使用することが、ベアリングのコストダウンの大きな足かせとなっている。
フルオン・アフラスは、その卓越した耐熱性と耐薬品性のバランスから、一般のフッ素ゴムでは耐えられないような高温グリースに対しても、極めて安定した耐性を示すので、安価な汎用耐熱グリースが使用でき、トータルのコストダウンに寄与できるものと考えている。
ディーゼルターボホース用途
環境規制の一環として、トラック用ディーゼルエンジンのブローバイガスを、ターボチャージャーの吸い込み口側に戻す必要が出てきた。今迄はオイルのミストが飛散してこなかったので、シリコンゴムで十分であったが、今後はブローバイガスに同伴してオイルミストが飛散してくるため、シリコンゴムでは耐油性に問題が出てくる。
代替材料として一般のフッ素ゴムとフルオン・アフラスが候補となっているが、オイルミスト中には当然塩基性化合物が含まれているので、一般のフッ素ゴムFKMでは内面の硬化劣化が懸念される。 フルオン・アフラスであれば、塩基性化合物に対しても耐性は十分で、耐熱性の面でも一般フッ素ゴムと遜色が無い為、この用途に最も適した材料と考えられる。
この様に、良好な耐熱性と耐薬品性を生かして、フルオン・アフラスの自動車部品用途は、今後も拡大していくことが予想されている。
フルオン・アフラスのホームページ http://www.fluon.jp
<参考>フルオンアフラスの特徴は、いくつかありますが、他のフッ素ゴムに比べて
耐薬品性が優れている (高温での強酸、強塩基でもほとんど劣化しない)
耐スチーム性 、連続使用温度230℃可能
電気絶縁性に優れている(体積固有抵抗率が1015 ~1016 Ω・cmと極めて良好)
ということです。
よって自動車用途では、シャフトシール用途 、シリンダーライナーシール用途、ベアリングシール用途、ディーゼルターボホース用途
一般工業用部品では、 メカニカルシール用途、重油用途、大型エンジン用途、ケミカルポンプ及びバルブ用途、食品用途及び半導体製造用途、電線用途
があります。
フルオンアフラスはガソリンには膨潤するため向いていませんが、一方耐薬品性がよいため、いろいろな添加剤を含んだオイル、グリースのシール、ホース材料に最適です。
現在、フルオンアフラスの販売用途は、国内の70-80%が耐熱絶縁電線で、残りがシール材やホース、逆に、海外では電線は少なく、殆んどが耐塩基性を生かした自動車向けシール用途です。従来、国内では、金型離型性が悪いため、型物用途では展開がすすんでいませんでしたが、新品種開発で従来フッ素ゴムの加工性を実現できるようになりました。これにより、フルオンアフラスの特徴を生かし、国内外のシール材・ホース材、型物市場にフルオンアフラスが用途展開されていくことになるでしょう。
耐塩基性がありますので、アミン系やいろいろな添加剤を含んだグリースを使用する分野、ベアリングシール、自動車シャフトシールへの応用が期待できます。従来のフッ素ゴムでは、シールゴムがグリース中の塩基性添加剤にやられ硬化してしまうこともありました。アフラスゴムはその点安心してご使用になれます。
フルオン・アフラスのホームページ http://www.fluon.jp
1.イントロダクション
2.耐薬品性を利用した用途展開(1) 自動車中心
3.耐薬品性を利用した用途展開(2) 一般工業用途
4.耐薬品性を利用した用途展開(3) 食品用途、半導体用途
5.電気絶縁性を利用した用途展開
耐薬品性データ1、 データ2、 いろいろな薬品に対する耐薬品性の指標
耐熱性データ 耐アンモニア、エチレンジアミン性試験写真
AFLASプレゼンテーション資料
フルオン・アフラスと一般フッ素ゴムFKMとパーフロゴムとの比較
フルオン・アフラスの品種
当初、テトラフロロエチレン-プロピレンの二元系ポリマーでスタートしたフルオン・アフラスだが、その後第三成分を加えた三元系ポリマーも上市されている。
ポリマー構造 |
TFE/P |
|
TEF/P/VdF |
品種 |
150L |
150E |
150P |
100S |
100H |
150CS |
150C |
SP |
SZ301 |
MZ201 |
比重 |
1.55 |
1.55 |
1.55 |
1.55 |
1.55 |
1.55 |
1.55 |
1.51 |
1.51 |
1.60 |
フッ素含有量
(%) |
57 |
57 |
57 |
57 |
57 |
57 |
57 |
55 |
55 |
60 |
ムーニー粘度
ML1+10
(100℃) |
35 |
60 |
95 |
160* |
110* |
130 |
100* |
75 |
67 |
50 |
ガラス転移温度
℃ |
-3 |
-3 |
-3 |
-3 |
-3 |
-3 |
-3 |
-3 |
-3 |
-13 |
外観 |
渇色 |
白色 |
黄色 |
加硫系 |
パーオキサイド |
電子線 |
パー
オキ
サイド |
ポリオール |
用途、特徴 |
ライニング
押出し |
汎用 |
高強度 |
押出し |
汎用 |
フルオン・アフラスのホームページ http://www.fluon.jp
旭硝子株式会社 フルオン・アフラスのお問い合わせ先はこちらへ
<表、写真、データ、資料は株式会社旭硝子からの提供です>
以上
更新日2002/09/20
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